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映画徒然草ミヒャエル・ハネケ監督作品その1
オーストリアのミヒャエル・ハネケ監督作3本。
『セブンス・コンチネント』★★★★ 1989年オーストリア、ミヒャエル・ハネケ監督。 平凡な中産階級の一家(父、母、幼い娘)が一家心中するまでの様子を、これ以上ないくらい冷徹な視点で描写した映画。心中する具体的な理由はほとんど描かれず、特に映画前半は何でもない一家の日常がこれといった盛り上がりもなく淡々と綴られる。はっきり言って退屈なくらいなのだが後半に一転、家具や日常生活道具などの家庭を構成する物質的要素を徹底的に粉砕し、最後に服毒自殺を図る。時おり挿入される荒涼とした海辺のカットは涅槃の風景なのだろうか? 『ベニーズ・ビデオ』★★★★ 1992年オーストリア・スイス、ミヒャエル・ハネケ監督。 しょっぱなから家畜の豚の屠殺シーンのビデオ映像。撮影したのはビデオおたくの少年ベニー、彼は撮影時に屠殺用の銃をくすねて隠し持っている。ベニーはいつも通っているレンタルビデオ店で少女をナンパし家に連れ込むが、屠殺銃で悪ふざけしているうちに少女を射殺してしまう。少女射殺も固定カメラでバッチリ撮影しており、映像を眺めているところを両親が目撃。だが父親は息子を通報することなく、隠蔽工作に走るのだった。少女を射殺するくだりがとにかく圧巻。直接的な血まみれカットはないものの異様な迫力に満ちている。 『71フラグメンツ』★★ 1994年オーストリア・ドイツ、ミヒャエル・ハネケ監督。 19歳の少年が突発的に銀行で複数の人間を射殺した後に自殺。その惨劇に至るまでの犯人の少年と被害者たちの日常が映画の大半を占めている。日常の平凡さ加減は『セブンス~』同様に意図的に退屈に描かれている。陰影の濃い画面、印象的なカットなど美しい場面も多いのだが、物語性を排している上に複数の登場人物たちがおのおのどういう関係なのか、そしてどこへ向かっているのかまったく見せてくれない。そして唐突に訪れる乱射のクライマックス。衝動的殺人の理由も何となくは描かれているのだが、それが真の理由という明言もなし。完全に見る側の解釈にゆだねられている。観客はそこに何らかの理由を垣間見るかもしれないし、何も見えてこないかもしれない。ファスビンダーの『何故 R氏は発作的に人を殺したか?』を思い出した。こちらの映画もラスト唐突に起こる惨劇に説明らしき説明がない。
by tomezuka
| 2007-10-29 18:50
| 映画徒然草ノンジャンル
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